(⌒ω⌒)ニィ。

ヨロシク。

【将棋 小説 おすすめ】「サラの柔らかな香車」(橋本長道著)感想

f:id:Aoi12:20180319204413j:plain
この記事では「サラの柔らかな香車」(橋本長道著)を読んだ感想を書きました。

 

この作品、第24回小説すばる新人賞を受賞した、作者のデビュー作だそうです。
作者の橋本長道さんは元奨励会1級という経歴。
めちゃくちゃ将棋が強そうですね。

この作品のテーマは「天才とは何か」。

天才少女のサラ、女流棋士の萩原塔子、かつて「天才少女」と呼ばれた北村七海。
天才少女のサラを中心に3人の棋士を描いた物語です。

あらすじ

プロ棋士を目指して挫折した26歳の瀬尾は、自暴自棄に暮らす日々の中で、ブラジル生まれの美少女サラに出会う。コミュニケーションのとれないサラに瀬尾が将棋を教えこむと、彼女は徐々に強くなり、いつしか驚くべき才能が開花する…。謎の美少女サラ、女流棋界のスター・塔子、天才小学生としてもてはやされる七海。3人の女性が指す将棋を巡って、「才能とは何か?」と厳しく問う、青春長編。第24回小説すばる新人賞受賞作。 

無職の男と天才美少女のコンビ

プロ棋士になる夢を諦めた無職の男(パチプロ)「瀬尾」と意味不明な言葉を呟き周りに理解されない美少女「サラ」。
この組み合わせはすごいギャップがあって、僕は好きなんですよね。
現実ではほぼほぼ無い組み合わせ。(多分)
サラという少女は言葉を話せるんですが、意思疎通が難しいというキャラクター。
そのサラに瀬尾は試行錯誤しながら将棋を教えていきます。
個人的にはこの2人のエピソードをもう少し見たかったかなという印象。
デビューするまでの話とか「萩原塔子」と対局するまでの話とかね。
どうしてもこの2人の関係性が、浅いというか薄く見えてしまう。
ラストでは仲が良いんだなということが分かる、サラのセリフもありましたが。
個人的にはもう少しこの2人を中心に描いて欲しかったかなぁ。

北村七海というキャラクター

かつて「天才少女」と注目された「北村七海」。
このキャラクターがいることで、読後感が良いというか読み終わった後、「あぁ、良かったなぁ」と思えます。
物語の中で唯一変化しているキャラクターなんですよね。
他のキャラも変化しているのかもしれないんですが、この「七海」というキャラクターが一番分かりやすい。
11歳の時に漢検1級に英検1級、ピアノも弾けて、将棋の才能も持つ。
このキャラも天才として描かれているとは思うんですが、大きな挫折をしているんですよね。
天才少女のサラと比べると「凡人」側なんですよ。
なので読者はこの七海というキャラに一番共感できるんじゃあないのかなと思います。(天才の読者除く)
このキャラクターがいないとこの小説は、キャラクターの自己紹介で終わったっていう感じが強かったんですが、このキャラの変化、成長を描いたおかげで何か良い感じに終わりましたね。
ですがこのキャラもいかんせん出番が少ない。
というか全体的にキャラクターの掘り下げがあんまり無い。
そしてこのキャラは、物語の軸に全然絡んでこない。
まぁページ数の問題とか色々あるんでしょう。

構成が独特

サラの柔らかな香車」。
全体的にとても面白く読めました。
ただ少し読みづらいかなぁ・・・と思いましたね。
この物語の構成が「橋元」というキャラクターが連載する「女神達の肖像」という読み物と、現在進行中の出来事として塔子とサラの女流名人戦第5局の様子が交互に描かれているんですが。

「女神達の肖像」という読み物→女流名人戦第5局→「女神達の肖像」という読み物→女流名人戦第5局の様に。
この構成のおかげというか、せいで、視点が分かりづらいんですよね。
誰目線でこの物語は描かれているんだろうって。
そして「橋本」というキャラクターが連載している「女神達の肖像」という読み物。
その読み物の中で「橋本」は何でそこまで知っているんだろうって思う描写も多々あります。
これなら最初から最後まで神の目線(第3者の目線)で進めた方が良かったかなぁと個人的には思いますね。
ですがあまり誰目線で語られているのか分からなくても、全然読み進めることはできるので、普通に読めるとは思います。

 まとめ

この作品。
キャラクターの掘り下げはあまりないんですが、魅力的なキャラクターばかりでとても面白かったです。
ラストも良い落としどころというか、良かったなぁと思えるラストです。
タイトルの「サラの柔らかな香車」。
香車っていうのは真っ直ぐにしか進めない駒で、どちらかというと「硬い」印象があるんですがこのタイトルでは「柔らかい」と付いています。
どういう意味なんだろうと思いましたが、物語の中でちゃんとタイトル回収もされています。
この作品は将棋を題材に描かれていて、専門用語もそれなりに出てきますが、ちゃんと将棋を知らない読者にも楽しめるよう、描かれています。(多分)
そして、将棋に関して知っている人はもっと楽しめると思います。
ちなみに僕は女流棋士のシステムとかは全く知らなかったんですが、楽しめましたし、中々興味深くて面白かったです。
続編も出ているそうで、ぜひ読んでみたいなと思いました。

終わり。